【その他雑感(23)-巣籠中に最近考えたこと(1):新型コロナ対策は無症状感染者に焦点をあてるべき】2020/12/22 07:57

 最近は、新型コロナ感染者の増加でテレビも新聞も病院での疲弊と自粛要請ばかりが報道されている。しかし、今は無症状感染者への対策を徹底すべきではないかと考える。ところが、政府も分科会も無症状感染者にはほとんど言及していない。夏の初めころに分科会の尾身会長が無症状感染者への対策を説明したことがあったが、その時以降は触れていないように思える。どこからかプレッシャーが掛ったのではとも勘繰りかねない。何らかの方法で無症状感染者を対象に検査数を増やせば、ただでさえ関心度のの高い感染者数のグラフが大幅に上昇することを危惧したのではないかと思える。しかし、今はそれでも無症状感染者を対象にした検査で感染者を確認し、隔離する仕組みが必要と考える。今週韓国では、無症状感染者の把握が極めて重要との判断で、例えばソウル市では、全市民を対象にして、56ヶ所に無料のPCR検査場を設置して誰でも受けられる体制を開始している。日本とは大違いである。

  • 無症状感染者に対する理解

     無症状感染者について確認する。テレビや新聞での有識者の意見から得た理解は次の通りになる。

  1. 無症状感染者は感染後2日目には他の人に感染させ得る。

  2. 無症状は5~10日程で発熱等々の症状が現れる。

  3. その5~10日間は自覚が無いまま従来通りの活動になり、他の人に感染させてしまう可能性がある。

  4. 無症状感染者の約80%は、自己免疫力で回復し、陽性では無くなる。

  5. この80%の人は、全く気付かないまま他の人を感染させていたかもしれないのに、本人は自覚も予想もしていない。

    通常、新型コロナの感染者は、症状ありの人から感染する割合はかなり低く、大半は無症状感染者から感染すると考える方が自然である。電車で咳をした人がいると席を移動する人が多いが、友達や知人が無症状感染者かも知れないと危惧する人は少ないと思われる。新聞・テレビで3蜜回避や外出の自粛を要請されても、友達との会食や集まりには参加する人も多い。症状のある人は参加を遠慮するはずであり、参加者は皆安全と思いがちになる。まさか、本人も自覚していない無症状感染者が一緒に参加しているとは予想していないだろうが、実際にはある程度の割合で無症状感染者が参加していることも考えられる。

     では、現在無症状感染者は何人くらいいるのか? 本来、分科会が主導し、専門家がその数字を推測して発表すべきと思うのだが、そのようなレポートは見たことがない。例えば、東京都の1日の直近の感染者数は平均7~800人だが、80%の無症状感染者は自助回復すると考えれば、少なくとも4~5倍の3000~4000人とも想定できる。厚生省は東京都で今月17~25日の間で3000人の抗体検査を実施中で、来年1月に報告される。対象数が少なすぎるように思うが、陽性率が報告されれば、無症状感染者が自助免疫で回復し抗体を有している人数の推定も可能になると思われる。ソウル市と同様の徹底的検査を実施すれば、東京都の感染者数は急増し、数千人になる可能性があるが、無症状感染者を徹底的に把握して、対応することで迅速な収束が可能になるはずである。

  • 無症状感染者に対するPCR検査

     ソウル市と同様の検査場の設置までは困難と思われるので、日本では、保健所でのPCR検査に加えて、民間のPCR検査、簡易PCR検査、抗原検査を活用すべきと思うのだが、最近の報道では、民間の検査は精度が低いので信用できないとの説明で、奨励しているとはとても思えない。現在のPCR検査体制と民間でのPCR検査等の体制を連動させた仕組みの構築が望まれる。例えば、民間の検査体制で陽性と診断された場合は保健所に連絡され、正規のPCR検査に連携されるようにする。この場合は民間での検査費用も国への請求となる。この仕組みは制度化され、民間検査組織も検査対象者も同意の上での実施にする。仮に制度が低くても、無症状感染者の確認には有効になるはずである。

     

     保健所では、PCR検査のトリアージュを設定し、陽性の場合は、そのガイドに基づき対象者の症状・体温に加えて血中酸素濃度も計測し、年齢・持病の確認の上、重症用病院、一般の陽性感染者用病院およびホテル等の隔離施設への振り分けを判断する。自治体は、無症状感染者の大幅な増加を想定して、隔離のための十分な施設を確保する必要がある。無症状感染者を含めた真の感染者の推定数を基にピーク時に必要となる病床数、確保すべき医師・看護師および支援スタッフ人数の確保および自治体間の支援体制の構築も進める必要がある。

  • 住民に対する自粛要請

     テレビも新聞も年末年始の外出自粛要請を必死に展開している。都知事や西村大臣、尾身会長も会見での呼び掛けを展開している。しかし、精神論的で漠然としたもので、なんとなく他人事に思えてくる。

     上述したような無症状感染者の実情を解説し、「あなたが無症状感染者かも知れません。もし、そうなら会食に参加しますか?」 「お正月に皆が集まったら、ひょっとしたらご自身やお友達が無症状感染者かもしれませんね。どんな対策を取りますか?」等々の問いかけを行い、その上で出来るだけ外出自粛を検討するよう要請し、他人事ではないことを強調すべきと考える

     

    日本でも来年3月頃からワクチン投与が始まりそうだが、オリンピックを無事開催するためには、春先までには無症状感染者を含めた真の感染者数を収束させる見通しが欲しいところである。

     





【その他雑感(22)-現在、巣籠り中-原因不明の肺炎のため 】2020/12/19 12:06

9月中旬に肺炎に罹り、6週間入院。ステロイド治療のため、退院後も人との接触回避の指示で来年2月頃まで巣籠りの継続になる。

 9月中旬に、初めての奄美大島で北部+南部のダイビングに出掛けたが、北部でのダイビング3日目終了時にいつもより疲れを感じ、体温も上昇したため4日目を休養し、様子見。が、体温も下がらないため、ダイビングを中止して帰宅。

掛かり付け医に相談し、PCR検査を実施。結果は陰性でホットしたが、熱は下がらないため、再度掛かり付け医に相談。撮ったレントゲン写真を見て、医師の顔色が変わった。肺が真っ白。血中酸素濃度が91%(正常値は99~97%)、90以下だと人工呼吸器の利用も検討するらしい。医師は総合病院と連絡し、即入院出来るよう要請。入院前にPCR検査と抗原検査を実施し、新型コロナは陰性との判断で病室へ。担当の医師は直ちに治療が必要と判断してステロイドと抗生物質の24時間点滴を開始。

  • ステロイドによる器質化肺炎の治療・

    医師の判断は、突発性器質化肺炎の可能性大とのこと。肺の中の小分けされた細胞(肺胞)に異常を感知して免疫機能が攻撃。が、治まらず範囲を広げるうちに暴走気味に無差別攻撃となり、肺全体に炎症が生じた結果と判断。免疫機能の活動を一時的に停止するために、ステロイドの点滴による治療となった。細菌性の可能性も残るので、合わせて抗生物質の点滴も併用。2週間程度で状況も良くなり、細菌性の可能性もなさそうなので、抗生物質の点滴は終了し、2週間でステロイドも服薬に切替えて治療継続。

  • ステロイドによる治療

    ステロイドの投薬は免疫力が抑えられるので外部との接触回避のために部屋から出ることは禁止され隔離状態。ステロイド治療は、急に量を減らすと色々の問題が生ずるとのことで、計画的に少しずつ減らすことになる。最初の点滴は40mg/日、当初は2週間ごとに5mgずつ減量。6週間で20mgになった時点で退院が許可された。

  • 隔離入院中の生活

    入院期間中で出来ることは、テレビを見る、本を読む、パソコンでインターネットを検索する、軽いストレッチをする、鉛筆パズルをすることぐらい。朝昼夕の食事が待ち遠しかったのは当然だが、1日3回の検温・採血も歓迎するイベントだった。今回、最初から入院は長くなるとのことだったので、パソコン、読んでなかった本、いつも旅行に持っていく25x25の数独ページを全部(20枚くらい)持参。入院と同時にレンタルWiFiを注文。部屋は隔離のために最初からトイレや風呂つきの個室が手配されており、室内で簡単なストレッチも出来る余裕があった。でも、本はそれほど長くは読めない、テレビ番組は面白いものが少ない(部屋のTVではBSが見えなかった)ということで、時間つぶしは鉛筆パズルが一番役に立った。隔離された生活では、買い物や本屋巡りが出来ないため、日頃から活用していたアマゾンでの注文も必要で、各種の検索と合わせてインターネットは必須になる。この範囲であれば、注文した5GB/日のWiFiサーバーで充分だが、映画を見るには不十分で、大きいサーバーの選択が必要になる。
     入院中も女房殿にもの凄く世話になった。1日おきくらいに着替えや新聞、届いた本、果物等々を届けて貰った。病院では新型コロナの対応で面会者は病室に入れないので、顔を合わせることも無く、電話でのやりとりだけ。女房もあちこち病気持ちなのだが、大いに世話になった。

  • 自宅での隔離生活

     10月末に、6週間の入院を完了して帰宅。この時点でステロイドの量は20mg/日。現在、6週間経過して、7.5mg/日まで減ったが、まだ人との接触は許されていない。今の計画では、来年2月末でゼロになる予定で、それまでは隔離生活になるが、唯一他人とは接触しないウォーキングは許可されているので、毎日1~1.5時間楽しんで速足で歩いている。以前のウォーキングでは、途中本屋巡りやコーヒー・ブレークを楽しみ、気に入った店で昼食をとりながらの2~3時間であったが、現在はただひたすら歩くのみ。3km四方内なので景色の変化は少ない。楽しみは、幼稚園・保育園の子供を遠目に眺めることくらい。子供たちは元気だ。

  • 体重が落ちた

     入院前の体重は67.7kg、入院後10日後、65.8kg、20日後には最低の63.1kg。徐々に戻したが、退院直後で64.1kg。ジム通いや間食を制限しても66kg台に落とせなかったのに、炎症とステロイド服用で3kg以上の減量。贅肉や脂肪を消化してくれたら有難いのだが、基礎代謝も3%減少なので、筋肉も少し消化したようだ。毎日1時間のウォーキングでは筋肉増強には物足らないので、筋トレをすべきなのだが、さぼり屋としてはジムで刺激を受けないと難しい。本格的な筋トレは来年春からに。現在は65kg台を維持することが目標。

     

     世の中は、新型コロナの感染数増大でこれまで以上の自粛が要請されている。こちらの巣籠は2月末までの予想なので、そのころまでに新型コロナが収まって欲しいのだが。

     今回の突発性器質化肺炎は、原因が解らないとのことで、回復後も再発を気にする必要がありそう。果たしてダイビングが影響したのかどうかの確認が今後の最大のテーマになる。





【その他雑感(21)-最近考えたこと(5):外出自粛解除後もほぼ自粛している中で 】2020/07/16 13:42

 <<新型コロナの感染者数に対する報道は正しいか??>>

 このところの東京中心の新型コロナ感染者の状況に緊迫した報道がされているが、感染者数のみに焦点が当たっており、本質の指摘がされていないのではと強く感ずる。

A:現状の確認

 最近の傾向を週次(日次はあまり意味がないので)確認すると次のようになる。

(-)

6/1-6/7

6/8-6/14

6/15-6/21

6/22-6/28

6/29-7/5

7/6-7/12

 

4/1-4/30

5/1-5/31

PCR検査数

10,130

11,573

11,588

12,575

15,263

15,519

 

8.960

25,412

PCR感染者数

147

161

239

331

651

1,162

 

3.750

960

陽性率

1.5%

1.4%

2.1%

2.6%

4.2%

7.5%

 

41.9%

3.8%

(出典:新型コロナウイルス国内感染の状況-東洋経済オンラインより加工)

この表をどのように理解すべきか? 確かに、6月に入って感染者は増加傾向にあり、陽性率も上昇している。だから2次感染の恐れがある、対策を検討すべきではないかと大騒ぎになっている。この理解は正しいのだろうか? 先ず、この結果はそれぞれの期間のPCR検査の範囲に基づいたものであることを確認すべきである。表の右の4月、5月の状況を確認する。4月は感染者が増大し、医療崩壊の恐れがあるため、徹底して重症の可能性の高い人に焦点を充ててPCR検査を実施していた。保健所で要請者から徹底して聞き取りを行い、陽性の可能性の高い人に絞って検査を実施していた。その判断が適切あったことから、高い陽性率を維持することが出来ていた。5月は、聞き取りの基準を拡大し、かかりつけ医師からの提言も加味してPCR検査の幅を拡大してPCR検査を実施し、入院が必要な感染者を低く保つことが出来た。6月からは、PCRセンターや医療機関でのPCR検査も加えて検査能力を倍増して実施してきたが、7月から感染者も増加している。6月後半からいわゆる夜の街等に焦点があたり、PCR検査の範囲を新宿区等に振り向けることで、陽性率も増加傾向になっている。全国レベルでも下図のように感染者の増加とPCR検査人数の増加は強い関連があると思われる。要は、感染者が増加したのではなく、検査体制の拡充に伴い無症状感染者を含めた真の感染者をより多く確認できるようになったとも解釈できる。無症状感染者を含めた真の感染者が増加しているのか、減少しているのか明確ではない。検査体制の拡充でより多くの感染者を確認できるようになったとも解釈できる。

  

都知事も7/15に警戒レベルを最高位に引き上げて対応策やPCR検査を10,000件に拡大すると宣言した。仮に陽性率5%を維持して、陽性者500人/日を確認できたとすると上述の1.1~2.3万人を確認するために22~46日掛かることになる。今後は、これまでの検査体制の拡充だけではなく、新規の対応策に変革すべきであり、具体策について考えてみた。

 

B:今後のあるべき新型コロナ対応策 <無症状感染者の確認を焦点とする>

これまでは、無症状感染者を戦略的に確認することは実施されていない。が、5月で重症感染者、軽症感染者の多くは確認されて病院等で隔離されており、6月以降の多くの新型コロナ感染者は無症状感染者から感染したと考えるべきである。無症状感染者は4日程度で症状が出るかあるいは回復してしまうと言われている。現在では、無症状感染者も感染能力があると確認されており、4日間+症状が出てPCR検査を受けるまでの日数(数日)の間は、自由に行動することになり、知らない間に密な状況下で他人に感染させている可能性がある。夜の街、ライブハウス、カラオバー、観劇シアター等々での感染者発生は大半が無症状感染者を介しての感染であると考えられる。

では、どのようにして無症状感染者を確認するのか? 日本の無症状感染者はどの程度の人数なのか?

先日発表された新型コロナ新分科会の対応では、感染者を有症状感染者、分野を特定した無症状感染者、不特定無症状感染者の3グループに分けて対策を検討するとしている。残念ながら、TVや新聞の報道ではこの発表に対する反応は極めて低い。日本がこれから実施すべきことは上記3グループの対応策の検討になるべきである。

 先ず、日本での無症状感染者はどの程度なのか? 国として推測・予想する必要がある。先週西村大臣が、日本全国で実施している全てのPCR検査、抗体検査、抗原検査の情報提供を依頼した(遅いけど)。これらのデータを統計的に分析すれば、大まかな推定値を策定できるのではと思う。例えば、6月初旬に実施した幾つかの抗体検査から、東京都とソフトバンクでの結果から考えてみる。東京都では無作為の1971人を対象にして2人(0.1%)の抗体陽性、ソフトバンクでは系列社員38,216人を対象にして86人(0.23%)の抗体陽性となっている。抗体陽性とは、かつて新型コロナに感染・回復して抗体を保有していることを意味する。要は、ほとんどの人が無症状感染で、いつのまにか回復して抗体を保有したことになる。東京の人口1100万人に当てはめると1.1~2.3万人になる。現在でも同程度の無症状感染者がいると考えると大幅にPCR検査の能力を上げ、より多くの感染者を確認する必要がある。無症状感染者がいつのまにか回復していると、無症状中に接触し感染した人は経路不明となる。特に、20~50代の働き盛りの活動範囲は広く、影響力は大きくなる。如何にして無症状感染者を回復前に確認するかが重要になる。

現在のPCR検査能力は増強されているが、あくまでも対象者は症状を意識した人であり、無症状者は対象になることは少ない。分科会の定義した3グループの内、有症状感染者はこれまで通りとして、不特定無症状感染者を対象にすることは困難なので、如何に分野を特定した無症状感染者を確認するかが重要になる。

例えば、企業単位で全社員対象のPCR検査・抗原検査(抗体検査ではなく)の実施、新宿区が推進したような地域毎の特定分野の住民、人の集まるイベント(スポーツ、劇場、各種遊興施設)での簡易PCR検査・抗原検査、航空機・長距離鉄道・船舶等での実施等々、出来ることから実施し、対象者を正規のPCR検査に繋げる仕組みを構築することが必要になる。各種の簡易PCR検査や抗原検査を選別・認定し、より拡充した正規のPCR検査体制と連携させた仕組みの構築が望まれる。

 

C:我々が実施すべきこと

1: 11人が無症状感染者かも知れないと意識して行動する。要は、これまでと同様に、3蜜を避け、マスクの着用、抗ウィルス消毒を徹底する。必要なPCR検査・抗原検査を受ける。

2: 感染者の増加問題をあおる報道は冷静に見る。感染者数の増減は、その時の検査対象がどうであったかに依存するものであり、必ずしも傾向値ではないと理解する。

3: 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を正しく理解して、積極的に活用する。COCOAは、現在そばに感染者がいるかどうかを知るアプリではなく、確認された無症状感染者との接触が過去にあったかどうかを知るためのツールと考えるべきである。無症状感染者がPCR検査で陽性になり、COCOAに登録すると、記録されていた過去14日以内の活動から誰と接触していたかを分析できる。無症状感染者がいつどこで感染したかは、本人も含めて、極めて解りにくい。COCOAを通して過去の活動から他の感染者と何処で接触したかを分析し、感染経路を見つけられる可能性がある。また、感染者の無症状時期の接触実績からPCR検査受診の案内を対象者に連絡することも可能になる。但し、感染者がPCR検査後にCOCOAをインストールしても遅いことになる。感染者になる以前にCOCOAをインストールすべきである。

4: 全くのワイルド・アイデア: 4日間の全国民活動停止

無症状感染者が4日程度で有症状になるか回復するとすれば、国民全員が4日間活動自粛をし、PCR検査場、病院・軽症者用施設および限定した移動手段のみ活動し、自宅で出来る作業は継続する。理論的には、4日後には、全ての感染者を特定し、無症状感染者も一旦クリーンに出来るのでは?? 費用的にも安いかも知れない。 日本では無理かな??

 

TV報道を見ていても、医療関係の有識者がPCR検査を増やすべきと発言してもほぼ無視して感染者数増加への対応策のみを議論しているように思える。議論されているような対策の徹底も重要であるが、積極的に無症状感染者を確認する仕組みも非常に重要であり、検査体制を拡充してより多くの感染者を確認すべきだと切り替えて欲しい。

 




【その他雑感(20)-最近考えたこと:外出自粛期間中に(4) 】2020/05/25 16:27

 外出自粛は5月25日全国での解除が決定された。その後は、どうなるか? 世界中で、出口の判断基準が色々議論されている。ワクチンと効果的な治療法が完成するまでは終息しないと思うが、自粛の段階を工夫して、収束してくれれば良いのだが。今回は、地方自治体について考えてみた。色々調べた結果、またまた長文になった。興味のあるところだけ覗いて下さい。印刷は必ずページ指定にして下さい。

 

最近は、コロナ感染者数の動向とPCR検査の仕組みが大きな話題であり、保健所の在り方や検査の集計の仕組みが種々議論されている。そこで、日本の地方自治体の在り方と自治体でのIT行政について考えてみる。その中で私の考える解決方法として新しいリージョン(地区)制とリージョンCIOについて整理してみたい。

A: 地方自治体の現状と課題

  1. 地方自治体の現状と団体数縮小(平成の大合併)の推移: 

    総務省発表の最新状況(2019/03末)で地方公共団体数および職員数は次の通りになる。
    団体数:1765(都道府県=47、市=792、町村=926)
    職員数:274万人(教育部門=101万、警察部門=29万人、消防部門=16万人、福祉部門=37万人、公営企業会計部門=35万人、福祉を除く一般業=55万人)

      地方公共団体は歴史的に数回の大合併で縮小してきたが、最新の平成大合併(平成7年から開始され、平成17年頃ピーク)により平成6年の3288から昨年の1771まで縮小(53%)している。それに伴い、全体の職位数も図のように、328万人から274万人(83%)まで縮小している。 

 
  1. 新型コロナの対応に見られる地方自治体の課題: 20年以上かけて、団体数はほぼ半減、職員数は約2割減と相当な努力の結果と思うが、本来の主目的から見るとまだ課題は大きいと感ずる。今回の話題の保健所も、ピーク時の852ヶ所から現在の469ヶ所と大幅に削減されている。地方自治体に限らず、経費削減や要員削減の指示が一律に出されると、本業は削減せずに下工程への支援作業を容易に削減することが多い。地方自治体に見られる課題を整理してみる(かなりの憶測含みではあるが)。

  • 超タテ割り、上下割り行政: 官庁、自治体のタテ割りは、各種の報道で我々も良く知る話だが、地方自治体での上下割りも強い。都道府県-市区町村の関係は上下の連携は極めて少ないように感ずる。今回の新型コロナの保健所での感染者データから、私の住む船橋市-千葉県-厚労省の連携を確認してみる。船橋保健所は、先ず船橋市に報告し、同時に(orその後に)厚労省に報告。千葉県は船橋市から報告を受けている。が、どうやら市川保健所は千葉県に報告し、市川市は千葉県のデータを参照しているように見受けられる。厚労省のHPでは、面白いことに、次の注釈付きで感染者数を掲載している。“令和258日公表分から、データソースを従来の厚生労働省が把握した個票を積み上げたものから、各自治体がウェブサイトで公表している数等を積み上げたものに変更した。” 
     新型コロナの対応では、新規感染者数は極めて重要な指標なので、本来は保健所⇒厚労省⇒地方自治体のルートであって欲しいのだが、誰も指示は出していないように思える。企業でもタテ割りの強い場合もあるが、緊急事態での報告ルートの指示はスムーズに徹底されることが多い。地方自治体の上下割りは独特の大きな課題と思う。
     これと同じ理由と思われるが、横の支援、上下の支援体制についても非常に弱い。今回の保健所でのPCR検査でも要員不足が問題視され、色々支援の申し出があったのにも拘わらず実現せず、全く別にPCR検査センターを設置する自治体もある。首相の依頼でもなかなか体制が整わない。

  • 部門横断的プロジェクトは実現が困難: 今回の新型コロナや災害対策では、部門を超えた対策チームの編成が必要であり、全体のプロジェクト管理が非常に重要になるが、地方自治体にプロジェクト管理の専門家は少ないし、計画的に育成しているとも聞こえてこない。国レベルでも、今回の新型コロナの対応を見るとプロジェクト管理の責任者がいるようには見えない。結局、災害対象地区の知事や新型コロナの西村大臣が責任者となるが、プロジェクト管理をしているようには思えない。米国に倣ってFEMA(連邦緊急事態管理庁)のような省庁の提言も出されているが、新型コロナの対応が落ち着いたら、国と地方自治体を連携した組織の設置が不可欠と思う。

  • いエンパワメント・レベルを維持したまま:地方公共団体の職員のエンパワメント・レベル(下記)はレベル5に限りなく近いのではないかと思われる。上司の指示というよりも、マニュアルの指示に従うことが多いように感ずる。住民の利便性を配慮することや職務の生産性を高める工夫や提言を行うことよりも、マニュアルに正しく従う傾向が強いのではと感ずる。作業の品質を維持するためには、マニュアルの徹底は極めて重要だが、色々工夫して効率や利便性の向上を図る自主性を高めることも奨励して欲しい。

    レベル1 : 自主的に行動し、日次や週次報告等で上司に報告する

レベル2 : 行動を起こし、同時に上司に確認する

レベル3 : 上司に進言し、その結果で行動する

レベル4 : 何をするべきか上司に尋ねる

レベル5 : 何をするべきか指示されるまで待つ

  1. 地方自治体におけるIT行政の課題

    製造業を担当していた元IT屋から見ると、地方自治体の(国レベルでも同様であるが)ITシステムは古い。技術革新が急速に進み作業効率や品質を高めるものがどんどん展開され、ITシステムの実用化も極めて簡単にできるようになっているにも拘わらず、これまでの書類中心の仕組みへの改革は検討されないように思われる。今回の新型コロナの対応を見ると、首相から国民まで感染者数の推移を注目しているのに、いまだに紙ベースでの集計作業のままになっている。保健所から新型コロナ専門家会議の間に、ITの専門家がいれば、2/15からのクルーズ船の対応の中で最新のIT技術を活用した集計システムが1~2日で準備されていたはずである。政府、専門者会議、自治体の中の誰も提言しなかったことは極めて不思議である。新規の検査と2回目以降の検査の区別がつかないため、PCR検査数が集計できない。PCR検査の受付けても検査待ちの日数(ピーク時は7日以上)があるため検査の感染率が計算できない。集計ミスがあったため、遡って修正が入る。この状態が3ヶ月以上放置されている。多分、保健所の医師に仕組みを変える負担を掛けたくないという理由ではないかと思うのだが、ITの専門家が準備すれば、医師の負荷は却って少なくなっていたはずである。

    B: 地方自治体のリージョン制展開の勧め 

     地方自治体を6~8リージョン(地区)程に統合し、企業で言えばホールディング・カンパニーとして定義し、コア業務をリージョンに統合し、各自治体は本来の業務に集中する仕組みにする。以前議論されていた道州制と少し考え方が違うので、リージョン(地区)と呼ぶことにする。

  1. 1) 数年前に議論されていた道州制との違い: 数年前に種々議論された道州制は賛否両論で、いつのまにか話題から消えている。議論された道州制も種々あったが、自民党基本法案に対して、全国町村会が反対し、道州制の課題を発表している。ここでの道州制の概要は、都道府県に代わり、道州を設定し、一部の国の事務事業を移管する。現在の市区町村を基礎自治体とし、都道府県の一部の事務事業を移管するとしている。全国町村会が指摘する課題は、集約すると、市区町村(基礎自治体)の事務事業の負荷が大きくなること、基礎自治体という一律の考え方で、市が主力となり、町村は地位が低くなる恐れがあり、町村は更なる合併を要求される可能性があること、結果として地方の自治力が衰退する等を挙げている。
     リージョン制では、都道府県をリージョンに統合することは同じであるが、リージョンに人事、総務、経理等のコア業務を一本化することにし、各市区町村に必要要員を派遣する。ポイントは、リージョン組織一体で、効率を上げ、地方自治のサービス・レベルを上げることにある。効率を上げるため、リージョン内の重複の徹底した排除、各職員の専門性強化による作業効率の向上を図る。サービス・レベルを上げるために、職員を最適配分し、特に、介護・福祉の拡充を図り、災害対策等の非常事態に備えて臨機応変に横・上下の連携できるようにする。

  2. 2) リージョン制で考慮すべき項目: リージョン制のイメージを具体化したいので、仮に首都圏の1都3県を首都圏リージョンとしたと想定してみる。現行の都・県の議員と職員は次のようになる。



  • リージョン内でのコア機能の統合と各組織体の役割分担: 人事、経理、総務等のコア機能はリージョン管轄として、市区町村の担当職員はそのまま市区町村を支援する。都道府県に所属する職員はリージョンに集約し、リージョンでの役割に従って最適化する。消防部門、警察部門、教育部門および福祉関係行政は、リージョンと市区町村の連携を強化する。一例として、年度方針、予算はリージョンに集約し、活動実施および管理は市区町村が実施して市区町村長およびリージョン部門長に報告する。福祉をのぞく一般行政では、ITを活用したリージョン共通の活用仕組みを構築し、徹底して利便性の追求、作業効率の向上を図る。効率が上がれば、余裕時間で新規の機能として、スマホ等のIT技術を活用して、住民からの要望や苦情を収集・集約して、市区町村およびリージョンに報告することも可能になる。 

  • リージョン内の会議体の在り方: 従来の市区町村議会と都道府県議会の連携は少なく、むしろ重複が問題視されることもあった。ここ数年間の大阪都構想の議論は、府議会と市議会の重複の解消が主題と理解している。現在、地方自治体に求められていることは、表面化した問題に対応することではなく、問題を予測して対応策を検討・実施することにある。そのために、住民と接触している第一線の職員からの最新の状況をタイムリーに把握し、リージョン全体で課題解決を図ることが必要になる。従って、自治体の上下割りを解消し、市区町村議会とリージョン議会の連携を図ることが重要になる。 一例として、リージョン議会を次の3つの機能で構成する。
     ①リージョン全体の年間計画、中期計画を構築し、リージョン、市区町村の予算配分を準備・決定する。 
     ②消防、警察、教員、福祉等の部門を管理する。要員計画、年次計画を決定し、市区町村のそれぞれの部門と連携して実施を管理する。
     ③地域(例えば従来の都道府県)代表のリージョン議員と市区町村長・議長で構成し、日々の課題・
     要望・不満を把握し、対策を検討・実施する。
    議会運営は、月~木曜日で①,②,③を開催し、金曜日を全体会議とする。市区町村会議は、③の議会の前日までに課題・要望・不満と検討したい対策案を議論しておく。それぞれの議会で決定された行動計画は、責任者と期日が決められ、次回の会議で進捗状況が議論される。①,全体会議は月次開催、②,③は週次会議とする。

  • リージョンとしての緊急事態対応等の組織横断機能: 今回の新型コロナ対応や昨年の災害対策等では、組織横断的なプロジェクト・チームの編成が必要になる。ダイナミックにリージョン内外の専門家や職員を招集する仕組みが必要になるが、それ以上にプロジェクトを管理するリーダーや専門家の育成が重要になる。リージョンの人事政策の中で各種専門家の計画的な育成を検討する必要がある。リージョン内の産業育成や観光のプロモーション等でも複数の部門の参加が必要になる。今後必ず発生するものとして、地域と企業のコラボレーションによる研究プロジェクトが考えられる。自動車業界のCASEと地域コミュニティがスマートシティの研究を開始しているし、新型コロナ対応の新しい働き方の展開として、IT企業と連携したオンライン教育やオンライン診療等の拡充の研究、農業、水産業、林業等と企業のコラボレーション等々、自治体と企業あるいは農協、郵便局等との連携が広がると予想される。

  • 介護サービスや児童相談所等の福祉サービスの拡充: リージョン制の大きな狙いの一つは、上述のような改革を通して要員・予算を削減し、介護や福祉の強化に繋げることである。上述の改革で、全地方公共団体の270万人の職員の20~30%程度は削減可能ではないかと考える。例とした首都圏リージョンであれば、10万人強の職員を介護や福祉サービスの拡充に活用できることになる。

  1. 3) リージョンCIOの任命とリージョンIT行政: 上述のリージョン制の仕組みには、最新のIT技術の活用が不可欠になる。リージョンIT行政に必要な考え方について考える。

  • リージョンCIOの任命: リージョン内のITシステムは、CIOを責任者として、リージョンで一元管理する。リージョンCIOは外部から最新のIT技術の実務経験者を招集して任命すべきである。国レベルでもCIOを任命し、官公庁全体でのIT行政の責任者とし、リージョンCIOと連携を取ることが重要になる。地方自治体のITシステムは、基本機能は全国共通で準備する。リージョンや市区町村での独自に必要な機能は最小限とし、リージョンCIOの判断で追加する。新しいリージョンIT行政で考慮すべき要素を整理してみる。
     クラウドやAI等の最新技術を活用し、リージョン内事務活動の生産性向上、住民への利便性の追求、短時間でのシステム開発等を実現する。世界的に見ると、現在の日本の官公庁でのIT利用レベルはOECDの中で、極めて低いレベルにある。地方自治体での海外の先進事例の調査レポートも多い。世界での先進事例を大いに参考にすべきである。韓国や台湾には参考にすべき点が多いはずである。またIT業界の中では、エストニアの官民一体の考え方の評判が良い。将来の参考にすべきと考える。
     企業でもディジタル化による改革が急激に進むことになるが、多くの中小企業ではなかなか進展していない。地方自治体の産業振興としての支援が強く求められる。リージョンCIOとそのチームは、地域の中小企業のディジタル化に対する指導・支援の仕組みも検討・推進する必要がある。

  • マイナンバー・カード、法人番号カード、在留カードの活用: 現在は、役所で何か依頼する場合は必ず伝票記入から始まる。今後は住民への案内を徹底し、市区町村の役所に行くときは、必ずカードを持参する習慣にしたい。来年3月からはマイナンバー・カードが保険証に切替え可能になるので、徹底し易くなるはずである。法人カードや在留カードの経験はないので、マイナンバー・カードを例にする。先ず、入り口にセットされているPC/タブレットにマイナンバー・カードを投入し、メニューから何をしたいか選択すると窓口と指定の伝票が印刷される。表示された窓口へ行き、伝票に署名し、担当職員に提示する。将来、伝票の必要がなくなれば、窓口で職員に名前を告げ、依頼内容を伝えることになる。依頼内容が住民票発行等の簡単な要請の場合は、コンビニのKIOSK端末と同様に、その場で書類が得られることになる。マイナンバー・カードが未発行や暗証番号不明の場合は、パスポートや健康保険証等の身分証明書持参で指定の窓口でサポートを得る。住民の利便性が向上すると同時に職員の応対の効率も向上するはずである。

  • 伝票と書類の排除: リージョン制自治体では、書類文化を終結し、IT活用文化に切り替える。IT利用が不慣れなお年寄りの支援にも工夫する必要がある。銀行等で実施しているフロア・ガイド等の仕組みも必要になる。それ以上に、自治体内部での意識改革は不可欠になる。書類での保管から電子ファイルの保管に切り替えると、隠し帳簿や二重帳簿は困難になる。電子ファイルでは、更新状況も記録する仕組みにすれば、改竄は容易ではない。上述の会議体を運用するためには、議事録を作成し、必要な議員・職員で共有することが必要になる。承認印のようなハンコ文化も、電子署名文化に切り替える。オンライン承認手続きになれば、大幅な時間短縮につながるはずである。

  • リージョン・データベースの構築、全リージョンでの共有: リージョン内のITシステムは、基幹的業務は統合すべきであるが、単発的な業務や地域特有の業務は、リージョンCIOと確認の上、個別に展開可能にするが、ルールとしてファイルはリージョン・データベースに保管する。これらのデータベースは、いわゆるビッグデータであり、リージョン内での分析に活用される。多くの情報は、民間のビッグデータ分析への提供も要請されるものであり、地方自治体と各種団体・企業との連携に有効なデータとなる。
     他のリージョンとの連携も容易であり、共通する分析にも活用できるし、住民移動に伴う種々の情報の移管・共有も容易になる。また、災害の備えとしてのバックアップ・ファイルもリージョン間で相互に保管することができる。

  • 今回の新型コロナ対応でも政府からの多くの通達が出され、地方自治体ではその対応で大混乱になっているようである。例えば、特別定額給付金の対応では、4/20に閣議決定され、私の地元の船橋市では、5/1にオンライン申請が開始され、5/18に郵送での通知が開始され、5/23に私の手元に配達された。オンライン申請の難しさが色々報道されているが、私の場合は、暗証番号も記録しており、ICリーダーもあったので、5/21に約30分で申請を完了した。報道では、オンライン申請では、目検に時間が掛かるので、郵送対応より遅くなる可能性ありとも言われている。自治体によっては、オンライン申請を使わずに郵送して欲しいと案内しているとか言われている。私の5/21申請の給付金はいつ入金されるか? 船橋市の対応力はどうか、楽しみでもある。
     今後とも政府からの通達は多くなると予想されるが、そのたびに各地方自治体が個別に対応する仕組みは早急に改革する必要がある。リージョン制では、リージョン統一の仕組みで展開し、郵送でもオンラインでも共通のITシステムで人手を介さない検査を出来るようにすれば良い。AI技術から見れば、この類いのオンライン検査は容易な作業の一つである。新型コロナの対応では、官公庁のスピードの遅さが顕著になっている。新規通達の対応では、クラウドとAIの徹底利用で、短期間での実現、目検に変るオンライン検査、住民への利便性の実現を図るべきである。

  • 最期に、新型コロナの感染管理の仕組みについて言及したい。これまでのファックス利用の感染者管理は早急に新しいものに切り替える必要がある。自粛解除を期に、ようやくあちこちから新規の管理の仕組みの提唱がでている。本来の自粛要請の目的は、医療体制の崩壊を回避することにあったはずであるが、いつの間にか感染者数の管理に変っている。感染者数を減らすことも重要であるが、治療薬やワクチンの完成までの半年から1年間の医療体制の拡充と感染者検査の仕組みを体系化し、管理する指標を明確にする必要がある。仕組みと指標が明確になれば、管理のためのITシステムは1週間以内に実現できるはずである。台湾で新しく任命された36歳のIT担当が、感染者追跡システムを2日で実現した話が評判になったが、最新のIT技術の活用で実現はそれほど難しくはない。管理の仕組みと指標を誰が責任者として設計するのかを決める方が難しい。当然走りながら試行錯誤で変更しながら、第2波、第3に備える必要がある。新型コロナ収束に効果的な管理の仕組みが今後のリージョンIT行政のたたき台にすることが望まれる。

     

    色々憶測を含めて整理してみたが、現在地方自治体に携わっている人はほとんど反対するだろう思っている。でもこんな地方自治体が実現できたら凄いと思うのだが。 自粛中の夢物語かも!?




【その他雑感(19)-最近考えたこと:外出自粛期間中に(3) 】2020/05/06 12:36

 まだまだ外出自粛は続きそう。我慢して、外出を自粛し、色々考えることを継続する。

今回は、日本の労働生産性の低さを確認し、私が考える原因と対応策について整理してみたい。これからの日本の将来を色々考えたら、今回も超長文に。細かい部分は斜め読み、印刷はページ指定にして下さい。

 3月23日の日経新聞に次のような記事が掲載された。

“生産性、日本は劣勢続く 先進国平均との差広がる デジタル化遅れ影響か” 

 要約1: 日本の労働生産性は低い状態であり、主要各国(OECD)の平均以下になっている。

 要約2: 日経の分析では、労働生産性とデジタル化の進捗度に強い関連性があり、日本のデジタル化の進捗が遅いことが労働生産性の低さの原因の一つになる。

 このテーマをより深掘りしてみることにしたい。

先ず、労働生産性とは、一人当たりの生産量であり、国別での分析では、GDP/人口(上記レポートでは、総労働時間)で比較している。企業で比較する場合は、総売上高または利益/従業員を利用することが多い。

 日本の2018年度の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)36ヶ国の18位、先進7ヶ国の最下位になっている。これまでの傾向は下図の通りであり、1998年以降ほとんど位置は変わっていない。

1990年までの高度成長期には上昇傾向にあったが、バブルが弾け安定成長期になると低位置のままになっている。労働生産性が低いままだと、給与も低いまま維持される可能性も高い。

何故、日本の労働生産性が低いままなのか? 日本は「おもてなし」精神が強いので、他国より時間を掛けるという説や日本は他国に比べて物価が安いのでGDPそのものが低いという説もある。しかし、実感として、個々の処理時間は日本人の方が速いと思うし、日本のGDPそのものは世界3位(2018年)であり低くはない。どうみても日本人の仕事は他国に比べて遅いとは思えない。であるのに、労働生産性はずっと低いままなのか? 私の考える理由は、余分な仕事をしているからと考えている。ここで、その理由や余分の仕事とは何かについて整理をしてみる。上述の日経の記事にあるデジタル化の進捗が遅い理由も合わせて考えてみたい。但し、既に企業改革が進んでいる企業も多いと思われる。あくまでも例として確認して欲しい。

 

  • エンパワメント・レベル

     先ず、労働生産性を考えるためのベースとして、エンパワメント・レベルについて触れておきたい。エンパワメントは、“力をつける“ということであり、社員一人一人が仕事を実行する力(パワー)を意味し、エンパワメント・レベルは、自主的に実行するレベルを表している。権限移譲と訳する人もいるが、エンパワメント・レベルに応じて権限移譲の割合を確保できると考えるべきである。レベルの定義も幾つか紹介されているが、ここでは次の5レベルとする。

  • レベル1 : 自主的に行動し、日次や週次報告等で上司に報告する

  • レベル2 : 行動を起こし、同時に上司に確認する

  • レベル3 : 上司に進言し、その結果で行動する

  • レベル4 : 何をするべきか上司に尋ねる

  • レベル5 : 何をするべきか指示されるまで待つ

社員は、自分自身の能力を向上させ、上司と相談・確認し、上位のレベルを目指す。上位レベルになれば、自分で判断できる割合が増加することになる。このエンパワメント・レベルを昇進や昇格の判断項目の一つに組み入れる考え方もある。組織的にも所属社員のレベルを高めることで、組織対応力や組織スピードの増強が期待できることになる。

欧米では、1990年代から人事政策の仕組みとして運用し、昇格や権限移譲の判断材料に利用している。しかし、日本ではエンパワメント・レベルという言葉は適切な日本語も無く、浸透もしていない。労働生産性の停滞と合わせて、その理由を確認してみたい。

 

A: 日本の労働生産性が停滞している理由の推測

 私なりに考えている停滞の理由は、大きく2項目、即ち、従来からの伝統的な部門最適化と多段階の組織形態である。

  1.  部門最適化と多段階の組織体系の背景: この2つの要素は、1990年代まで続いていた高度成長期に形成され、適用されていた。多くの企業で、毎年策定の経営方針を方針展開として、各基幹部門や事業本部に指示し、それぞれ部門方針を策定し、下部組織に展開していた。各部門で最適化を図り、多段階の組織形態を通して、計画策定(予算化)⇒下部組織で運用⇒実行管理を徹底していた。いわゆるタテ割り行政になる。

  2. 安定成長期(低成長)における部門最適化と組織形態の問題点: 安定成長期に入ると、一般的に最初に経費削減を目指す。この段階では、タテ割り行政の展開でも目標達成が可能であった。しかし、経費削減を長く続行すれば、企業規模縮小に陥る。企業規模の維持・拡大のためには、売上拡大の戦略展開が不可欠になるが、タテ割り行政による課題が多い。

  • 複数の部門のバラバラな戦略: 各部門で色々工夫して新規分野への参入を図るが、狙う領域が重なることも多い。混乱するのは営業部門やお客様で、企業内競合が発生する。

  • 競合の激化に伴う社内折衝の増加: 高度成長期では、暗黙の了解で市場の棲み分けが図られ、競合状態は最小限に維持されていた。安定成長期では、市場の取り合いになる。異業種や海外企業からの参入も激しくなる。お客様からの値引き、取引条件の緩和や特殊機能の追加等の要求のために主幹部門との折衝が必要になる。タテ割り行政の中で、先ず自部門の上位管理者に説明・説得が必要になる。上司が消極的であると作業量の負荷も大きくなる。自部門の説得の完了後、主幹部門への依頼になるが、例外処理の扱いになるため、承認獲得までの負荷は大きい。複合商品の場合は、関連する部門の価格責任者と個々に折衝することになり、大変な負荷になる。

  • 複雑な商談や社内プロジェクトの部門を超えるチーム編成の増加: インターネットで容易に各社の情報が把握可能であり、技術革新により選択の幅が広がる。その結果、市場や顧客の要望が変化し、単体商品はネットでの購入の割合が増え、営業との商談は、課題の解決や要望の満足を得るための提案依頼が増加する。依頼を受けた営業職は、1人では無理なことが多く、それぞれの専門分野を有する専門営業とチームで対応することが多くなる。複数の部門からダイナミック・チームを編成する場合には、それぞれの部門長と折衝が必要になる。招集したい専門職は所属部門の重要な戦力であることも多く、交渉のための作業負荷も大きくなる。

  • 部門内月次/週次の部課長会議: 安定成長期になると、業務目標の達成は容易ではなく、月次/週次会議で状況の確認、課題の抽出、対策の検討が議論される。数多い案件やプロジェクトの全てに関与しているわけではないが、上司から質問されて「未把握です」とは答えにくい。そのため、事前に質問されそうな状況について、部下に状況レポートを求めることが多くなる。部課長は大量の資料を抱えて会議に臨むことが多い。また、会議で対策を求められた場合には、部下を招集し回答文書の作成を求めることもある。月次/週次会議の前後には、部下の作業量が増えることが多い。

  • 課長の指示による作業指示の弊害: 安定成長期になっても、高度成長期の延長線上で課長からの指示で作業を進めるという企業も多いようである。各種の依頼や申請をする場合も課長に了解を得る仕組みも多い。2009年に行われた総務省のテレワーク実施試行で最初に紹介された機能が、テレワーク中の課長席のPCにセットされている課長呼び出しボタンだった。また、折角テレワークしている社員が捺印の依頼のために出社しているとニュースで紹介されていた。キャスターは対外的な書類の社印捺印の依頼のようだと説明されていたが、社印を必要とする類の書類はそれほど多くはないし、郵送でも間に合うことが多い。課長の判断を必要とする書類への捺印依頼の可能性が高いと思われる。
     課長の指示で活動している環境では、部下が自主的に仕事を進めると、勝手に動いていると判断されかねない。課長をスキップして上位管理者と相談することはタブーに近い。課長から見ると自分の存在感を軽く思われるという不安感が強くなる。
     最初に紹介したエンパワメント・レベルに当てはめると、部下はレベル3までが望ましく、レベル4,5は奨励し難い。高度成長期からの長年の考え方であり、簡単には変わらない。部下も自分の判断で作業を進める望みは低くなるが、自分で工夫することや判断する必要がないので、気分的には楽である。

    B: 労働生産性向上のために考えるべき対策

  • 全社最適化: 試行錯誤が多い状況で経営スピードを上げ、全体の生産性を向上するためには経営戦略の全社最適化が必要になるが、実現には極めて厚い壁がある。部門長が抵抗勢力になる可能性が高い。部門最適化時代の部門長はお城の殿様に近い。全社最適化になると、そのお城の明け渡しを要求される。今まで最適化してきた自部門の運営は、制限を受けるし、思い通りにならないことも生ずる。全社最適化には、最上級役員の強いリーダーシップが不可欠になる。

  • 管理者の役割の見直し: 安定成長期の管理者には新たな役割が加わる。変化の激しい市場や顧客の変化をタイムリーに把握し、経営戦略に迅速に反映させるというボトムアップの役割が求められる。市場や顧客の変化に接している第一線の社員から迅速に状況を確認し、統合し、集約し、上位管理者に伝達する双方向の方針展開に切り替えることが必要になる。
     また、経営スピードを上げるために、フラット組織に改革することも検討される。主に実務管理を担っていた課長職は専門職としてのグループ・リーダーの役割に切り替え、人材管理や組織管理を部長の役割に集約することも考えられる。

  • 総合職と専門職: 最近は、多くの企業で専門職の強化が進んでいる。市場や顧客が求める解決策を提案するようになると、社内・外に専門職のネットワークを準備し、必要に応じてダイナミックにチームを編成して活動することになる。部門や企業を超えて活躍する専門職も出現することもある。専門職は文字通り人的財産となり得る。例えば、経理部や法務部の社員が専門職として、解決策構築のチームに参加し、経理的、法務的なアトバイスをすることも考えられる。総合職の管理職も管理の専門職として人材育成の対象になる。米国では、外部の管理者研修のカリキュラムが豊富にあり、マネジメント・スキルを高めることを要求されている。

  • エンパワメント・レベルとエンゲージメント・レベル: 新しい仕組みの展開により、社員は高いエンパワメント・レベルを目指すことが望まれる。エンパワメント・レベルの向上とエンゲージメント指数(社員のやる気、企業への貢献意欲)が相関するという論文もある。どのように計測したか不明だが、

  • 図にあるグラフでは日本の社員のエンゲージメント指数は低いと表示されている。エンパワメント・レベルを高めることを昇進・昇格の基準に組み込むようにし、管理者も含む全社員が高い専門性を追求することが望まれる。従来は、昇進のために管理者を目指す傾向にあったが、これからは専門職としての昇進・昇格の体系を構築する必要がある。
     このような対策を実現するためには、企業内の仕組みの大幅な改革が必要になる。新型コロナによる外出自粛の要請で活動が制約されている今こそ改革の絶好の機会になる。思い切って、新型コロナの収束時には、新しい仕組みで再開できるようにすべきである。

    C: ディジタル化への対応:

  • 守りの投資から攻めの投資へ: 安定成長期では、先ずコスト・経費の削減を推進し、次の段階で売上拡大に切り替えることが多い。それに伴い、デジタル化の米国での傾向は、守りの投資から攻めの投資に切り替わっている。しかし日本では、依然として守りの投資が継続している。


  •  経費削減の段階では、従来通り基幹業務を担当する部門が守りの投資を推進できる。しかし、売上拡大のための攻めの投資には、営業部門やマーケティング部門が主導する必要があるが、主幹部門が強いためなかなか移管されない。
     攻めの投資に切替えるためには、全社最適化の中で売上拡大戦略を展開することが必要になる。基幹業務の機能を分解し、全社最適化の仕組みに再構築することになる。

     デジタル化の中心になるクラウド、IOT,AI等の新技術は、これまで触れた対策を実現するために非常に有効になる。ITコンサルタントの支援を受け、基幹業務を機能分解し、クラウドを活用して新しいものに組み立て直す。できるだけパッケージを活用し、徹底的にシンプルな仕組みにして、最小の工数で、最短の期間で実現できるよう工夫する。AIの活用は難しいことは考えず、先ず従来の作業で、社員がつまらないと思う作業にAIを利用することから開始し、社員はより創意工夫が必要な活動に集中すべきである。

  • 電子決済: 外出自粛要請の中で、電子決済の採用も勧められている。電子決済を支援するパッケージも色々あるので導入することは難しくはないが、導入前に徹底して現在の社内伝票の見直しを実施すべきである。改革後の伝票の必要性を確認し、更に捺印欄にある承認者の必要性を吟味する。重要な伝票については、決済権限ルールを設定し、電子決済システムに反映させるべきである。

  • テレワーク: 4/23の経団連の発表では、調査した406社では97.8%の実施率となっている。一方、LINE分析等での発表では27%となっている。要は、企業としてはテレワークの環境を準備しているが、社員の利用度合いはまだ浸透していない状況になっている。エンパワメント・レベルの高い社員はテレワークの利用で生産性は高まると期待される。
     一方、テレワーク実施中に不安を感ずる人や孤独感を持つ人もいる。作業指示や指導が必要な若手や経験不足社員には、アドバイザーを任命し、グループ・リーダーやアドバイザーと容易に相談できる仕組みにすることが望まれる。

  • オンライン会議: 日本でも、IT企業や外資系企業ではオンライン会議は良く利用されている。米国では2001年の911以降、オンライン会議の利用頻度が高くなっている。911直後、航空機利用は敬遠され、出張を伴う会議は開催できず、オンライン会議が主流になっている。人数の多い事業所では、会議室に集まり、他の事業所からはオンラインで参加する形式も多い。最近のニュースではTV会議を紹介しているが、企業での会議にTV利用はそれほど必要ではない。現実の会議は、議題を議論し、何かを決定することが多く、説明者が準備した資料をたたき台にして議論する方式が多い。参加者は顔写真の表示で充分確認できる。管理者が主催する顔見せ的な会議は不要不急とし、管理者からの通達メッセージは動画配信で充分カバーできる。

     

    新型コロナの収束後の経済は急速に回復するが、一律ではなく、効果的に対応した企業が伸び、旧態依然とした企業は取り残されると言われている。絶好の機会になるこの数ヶ月間で企業改革に取り組むべきと思われる。我々の投資計画も各企業の取り組みの分析が必要になる。じっくりと投資先を検討したい。

     




【その他雑感(18)-最近考えたこと:外出自粛期間中に(2) 】2020/04/26 18:01

【その他雑感(18)-最近考えたこと:外出自粛期間中に(2) 】 

<< トヨタが変わる! トヨタの営業が変わる!! >>

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)が大きく変わろうとしている。昨年12月、豊田章男社長は、企業情報のトップ・メッセージで 「モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジに向けて」と企業の方向を発表している。

項目としては、次の3項目。

  1. CASE*の時代に合わせたビジネスモデルの転換 

  2. 「人」が中心の未来に向けて

  3. 「人づくり」にとことんこだわる

    詳細は https://global.toyota/jp/company/mess ages-from-executives/

      *CASEConnected, Autonomous/Automated, Shared, Electric  (コネクテッド、自動運転、シェアリング、電気自動車)

    そこで、モビィリティ・カンパニーのビジネスモデルの構想(例)を全く勝手に考えてみた。

    (注: 外出自粛要請で時間もあるため、長文になりました。細かい部分は斜め読みしてください。)

     

ビジネス・モデル
  1.  トヨタのビジネス・モデルを想像してみると図のようになる。従来は、経営方針がトップ・ダウンで展開され、経営方針の更新は、年単位あるいは四半期単位に実施されており、お客様からのカスタマイズの要望は、ディーラー・オプションやカスタム・ショップ等の下流工程で実施されていたと推測する。

    一方、新規モデルでは、大きなテーマとして、次の要素が必要になると考えられる。

  1. 1)従来モデルと新規モデルが共存する。従来モデルは売上や利益確保のベースとして、徹底して販売効率を向上する必要がある。新規モデルでは、お客様と新しいモビリティ・スタイルを相談し、その中でお客様の要望を確認し、解決策を合意しながら設計・提案・実現する販売活動が必要になる。

  2. 2)新規モデルの利益率は、従来モデルに比べるとかなり低くなり、且つ試行錯誤の傾向になる。従来モデルで充分な利益を確保し、新規モデルの低利益率をカバーする必要がある。従来モデルのみの継続では、企業規模を縮小することになる。従来モデルによる利益確保が可能な間に、新規モデルを定着させ,増強させることが必要になる。

  3. 3)新規モデルでは、系列・関連企業や協力企業との連携が不可欠になる。モビィリティ・スタイルによっては、従来とは異なる企業との連携も必要になる可能性が高く、アライアンス(企業連携)戦略の立案・推進する専門組織を増強する必要性が生ずる。

  4. 4)このようなモデルでは、お客様の要望・課題を的確に把握・解決し、市場の変化を迅速に経営方針に反映させることが不可欠であり、双方向の方針展開の仕組みの構築が必要になる。

     

     このようなモデルがどのように展開されるのか、勝手なイメージを想定して、具体的に考えてみたい。

     

    A) 「コネクティッド・シティ」の構成要素となるような新しいモビリティ・スタイルの例を想像してみた。 

    1) モビィリティ・オフィス

    マイクル・コネリー(米国の推理小説家)の小説に「リンカーン弁護士」が主人公のものがある。この弁護士は、事務所を設けず、豪華なリンカーンをオフィスにして、専属のドライバーと契約し、顧客との打合せ、現場調査や裁判所等、どこでも出かけて、問題を解決する。
     新しいモビリティ・オフィスではCASEを活用し、より快適で先進的なオフィスを実現できる。WIFI接続でリアルタイム情報の把握・共有が出来る。自動運転が可能になれば、ドライバーの代わりに、アシスタントを同乗させられる。サブスクリプションにより、車やオフィス機器を妥当な経費として利用できる。中心地のオフィスの賃料と比べれば充分採算が取れると思われる。更に、EVなので、車内のレイアウトを目的に合わせて、最適に設計できる。新型ウィルスの対応で定着しつつあるテレワークがより快適な環境で実現できることになる。動くテレワーク・オフィスは、弁護士だけではなく、色々のコンサルタントやフリーランサー、特殊技能を持つ技師、修理士や医師等の利用が考えられる。それぞれの用途に合わせてレイアウトや備品設置が設計可能でなり、幅広く拡張可能と思われる。また、延長線上に、モビリティ・ハウス(キャンピング・カー)への切替も考えられる。

    2) モビィリティ・ショップ

      新型ウィルスのための外出自粛要請でフード・トラックや移動スーパーが注目を受けており、今後更に拡大していく可能性が高い。モビリティ・ショツプでは、EVをベースにフロアや筐体の自由度は高められ、他のCASEの機能を活用し、ショールーム、実演販売や新しいビジネス等にも展開することが可能になる。例えば、モビリティ占いを考えてみる。移動車のなかに幾つかの気密性の高い占いブースを準備し、見込み客の多そうなオフィス街に移動する。占いブースでは、WIFIを利用して、好みの占い師を予約し、占いを依頼する。5Gになれば時間差もないので、あたかも目の前で好みの占い師と相談しているような臨場感が得られる。複数の人気のある占い師と契約し、SNSで当日の移動場所を提示し、ブースと占い師を予約する。占い師はWIFI接続可能な場所であれば、全国(海外でも?)どこからでも対応できる。
     ファッション系やスポーツ・グッズ系等でも対面販売が望ましいケースで、わざわざ店を構えずに、見込み客を期待できる候補地を順に回ることができる。5Gを利用して、お客様の採寸をしながら映像合成で試着をすることやスポーツ・グッズの効果を測定するという商談も可能になる。また新しいサービスとして、何人かのファッション・アドバイザーと契約し、ウェア、アクセサリー、宝飾品を含めたトータル・コーディネーションを合成映像で確認しながら最適な組み合わせを選択できる。スポーツ・グッズの分野でも、スポーツ・トレーナーや栄養士等とオンラインで、身体測定の結果を共有しながら、お客様の要望を反映したグッズの選択ができる。

    3) シニア・モビィリティ

     シニアの免許返却が話題になっている。自動ブレーキや自動運転のりようで、シニア・ドライバーも存続すると思うが、市街地や過疎地でのシニア用のコミュニティ・バスの拡充が望まれる。地元のコミュニティ・グループと連携し、シニア用各施設や個人宅およびスーパー、医療施設、図書館等との移動サービスを提供するシニア・モビリティを考えてみる。CASEを活用して、より効果的に必要箇所を巡回するコミュニティ・バスを展開できると思うが、自動運転が定着した段階では、更に無人化し、センター・コントロールの仕組みに展開できる。コミュニティ・バスでは、ロボットが運転管理や乗降案内を行う。更に、支援ロボットを装備し、乗客の荷物運びを支援し、ネットで注文した荷物や薬の受取りも支援できるようにする。このようにCASEを活用して、現在のコミュニティ・バスを更に要望に即したシニア・モビリティへ拡充することが可能になる。

    4) モビィリティ・デリバリー

     現在の宅配サービスは、今回の新型ウィルス対策の1つの受け皿として需要拡大が見込まれているが、合わせて各種の課題が生じている。CASEを活用して、これらの課題の解決策をモビリティ・デリバリーとして提供できると考える。再配達が最大の課題と理解しているが、WIFIやスマホを活用し、不在状況や希望時間をより細目に把握し、AIを利用してリアルタイムに最適なルートを選択していくことで、再配達を回避し、配達効率を上げることができる。今後、ロボットの活用も検討対象になる。

  5. 5)乗用車モビリティ

     従来モデルの延長線になる乗用車モビリティでも、CASEの本格的利用で、変化の激しいお客様の要望を個別に対応する自由度の高いモビリティ・スタイルを提供できると思われる。

     

    B)販売活動

     新規モデルでは、販売活動の変革が必要になる。「人」即ちお客様と営業職が合意しながらすすめていくためには、次の手順による活動が不可欠になる。モビリティ・オフィスを例にして確認してみる。

  1. 1)興味の喚起: 新規モデルでは、見込み客の興味の喚起が必要になる。見込み客候補として、自前のオフィスを検討しているようなコンサルタント、特殊技能者、デザイナー等々を調査する。個々に調査することは非効率なので、例えばセミナー開催のパンフレットを準備し、ベンチャー企業やスタートアップ企業を支援するチャネル等を通して案内することが考えられる。 パンフレットでは、「希望に合うようなオフィスが探せない、賃料が高すぎる、オフィスからお客様へまで遠い等々の問題でお困りではありませんか?当社では、皆さんが課題に対応する解決策を提供可能です。ご興味はありませんか?」を伝え、セミナーで具体的な解決事例と効果(採算を含めて)を紹介する。

    2)要望の確認: 興味の確認ができたら、お客様の課題を解決するための要望や条件を具体的に確認する。同時に、これらの要望や条件が満足出来れば購入する意思も確認する。

    3)解決イメージの提示・合意: 次に、解決策のイメージを準備し、お客様と摺り合わせて、合意を得る。この段階では、解決策を良く理解している専門営業との協同作業になる。専門営業は、必要に応じて、複数人の参画も考えられる(例えば、レイアウトや備品等の専門と駐車条件や法的条件等の専門)。大まかな費用の提示とお客様の予算確保の可能性も確認する。

    4)解決策の設計・提案: お客様の購入意欲が確認できたら、詳細な提案活動を開始する。提案活動では、専門営業が主導することが望ましい。解決策の提供に系列・関連企業や協力企業の参画が必要な場合は、提案活動からの参加を依頼する。提案内容には、解決策の内容、価格、日程等に加えて、お客様が準備すべき作業・日程も含まれる。

    5).契約・納入: 契約が完了したら、解決策を構築し、納入する。工期が複雑で長期になる場合は、デリバリー・リーダーを任命し、お客様のプロジェクト・リーダーと連携する。

     

    C) 新規モデルでの営業体制に対して考慮すべきと考える項目

    1) チーム・オペレーション: 新規モデルでは、営業部門に多くの新しい役割が必要になる。トヨタは、昨年4月に子会社であった東京トヨペットなどの販売会社をトヨタ本体に統合した。まだ1年経過なので、各子会社の体制の本格的統合は途上であり、今後モビリティ・カンパニーとしての新しい営業体制に整理統合されるものと推測する。新型ウィルス対応で第一線の活動は減少していると思われるので、新しい体制および新しい仕組みに切り替える絶好のチャンスになる。
     先ず、マーケティング部門を拡充し、各部門および各国の計画を統合してトヨタ・グループとしての経営計画を策定すべきである。次に、アライアンス管理部門を増強し、系列・関連会社との連携、新規モデルの共有を図り、協力会社とのアライアンスの構築、維持、強化を管理する。従来、下流工程で車の改造をサポートしていたカスタマ・ショップ等は上流工程に参画を依頼する可能性が高いし、それぞれのモビリティ・スタイルに必要な備品の装備では、新たな協業の形成が必要になると思われる。
     営業体制は幾つかの役割に分かれ、必要に応じてダイナミックにチームを編成し、共同して活動する必要がある。

    2) 意識改革: 新しいビジネス・モデルの検討および企業の仕組みや営業体制の構築は、限られた上層部と専門スタッフチームで推進可能であるが、運用実施は営業部門全員が納得して実施する必要がある。「人づくり」をベースにモビリティ・カンパニーをつくり上げるためには、全員の意識改革が不可欠になる。私の経験では、営業部門や開発部門の意識改革は容易ではない。一つは、ベテランになればなるほど経験に基づく独自の仕事のやり方を有しており、それに固執する傾向がある。また、かなり厳しい業務目標があるため、特に、中間管理職は強く意識していると推察できる。目標達成に専念していると改革の実施度合いよりも業務目標達成を重視し、保守的になる傾向がある。意識改革の徹底は第一線を中心にしがちであるが、上層部から意識改革を徹底・確認し、上層部から中間管理職の意識改革を主導する。その上で、第一線の意識改革を展開する。第一線だけの徹底になると、実施段階では常に上司の顔色を見て、うわべの実施になることも考えられ、展開に非常に長い時間を要することになりかねない。

     

     私が所属していたIT業界では、同様の営業改革が1990年代後半から始まり、21世紀になってようやく定着したように感じている。世界最優良企業の一つであるトヨタ自動車でのモバイル・カンパニーへの変革がどのように展開されるか、非常に興味がある。日本経済の発展のためにも効果的に推進し、世界の自動車業界を主導すると期待している。

     




【その他雑感(18)-最近考えたこと:外出自粛期間中に(1) 】2020/04/13 07:32

もともとの予定では、今週からモルディブ 北上コースに出掛ける予定であったが、当然のことながら中止で、来年の北上コースに延期した。次の予定も立てられない。最低限の買い物は、女房殿の担当なので、こちらが出来る外出は、唯一年寄りの健康維持のため許されているウォーキングのみ。時間はたっぷりあるので、最近考えたいろいろなことをまとめることにした。

【トピックス1】 オジンダイバーの夢:分身型水中ドローン・ロボット

私のダイビングの目標は、85才まで潜ること。それまでは足腰が持つよう鍛えておきたいと思っている。その後は、隠居生活と考えていたが、最近の技術の進歩で足腰が弱ってもダイビングを楽しめるのではないかと期待できそうに思う。既に、水中ドローンは色々工夫されているし、分身型ロボットも限られた範囲で実現している。5Gが展開・定着し、次の6Gの時代に更なる技術進歩で色々な課題も解決されると期待される。

A.考えた仕組みは次のようなもの。

分新型水中ドローン・ロボット

  1. 分身型水中ドローン・ロボット(以下、分身型ロボット): 送受信機能、レンズ機能、収音機能を持った分身型ロボットで、いわゆる人間型ロボットでも魚型ロボットでも水中を走行できれば良い。レンズと収音機能で得られた動画、静止画は5G技術を利用し、ダイビンク・ボート上の中継器を通してオーナーが待つリゾート・ホテルあるいはクルーズ・ボートにドローン機能で送信され、オーナーからのコントロール情報で、移動や映像の向きあるいはズーム・ワイドの操作が行なわれる。分身型ロボットは常に位置情報を確認し、自分自身のポジションを安定させる。オーナーは、例えばゴーグル型ディスプレーを通して、リラックスしたソファーで、コーヒーを飲みながらでも、あたかも自分で潜っているような体感を得ることが出来る。メイン・コントローラに、アダプターを付ければ、複数人数での体感も可能になる。

  2. メイン・コントローラ、サブ・コントローラ: 分身ロボットの走行は,オーナーが、ロボットから送られた映像をリアルタイムで確認し、空中ドローンと同様に、コントローラーで指示する。さらに、非常用のサブ・コントローラをガイドまたはバディが保持し、メイン・コントローラからシグナルが途絶えた時には、自動的に設定した距離(例えば5m横)を保つよう切り替わる。従って、ケーブの中や悪天候等による電波障害時には、自動的にサブ・コントローラの制御下での移動になり、映像情報はビデオ映像として確保される。また、分身型ロボットは、サブ・コントローラより設定距離より前には出ないよう、サブ・コントローラより深くには行けないよう制御され、チーム・ダイビングやバディ・ダイビングの原則を逸脱するようなオーナーの指示は受け付けないことになる。

  3. 分身型ロボットの活動範囲: これまでのダイビングの経験から、ホテルやクルーズ・ボートのメイン・コントローラから中継器までの距離は最高10 Km程度離れる可能性があるので、許容限界は 15 Kmと考える。中継器から分身型ロボットまでの距離は、ドリフト・ダイビングを考えると 1.01.5 Km必要と考える。技術的には良く解らないが、この範囲であれば、Local 5Gの利用で実現できるのではないかと期待する。

     

    B.分身型ロボットの利点

    1) このような機能が実現すると、体力のないシニアには大変有難い。先ず、タンクを背負ってのダイビングではないので、エアー切れの心配は要らない。バッテリーの容量を90分程度にすれば十分と思う。分身型ロボットのパワーはかなり強いものになると期待出来るので、シニア・ダイバーには危険と思われるような流れが強いポイントや深い場所等でも潜ることが期待できる。当然、オーナーはダイビングのCカードを持つ必要はないので、誰でも体感できることになる。当然、重い器材を持っていく必要もなくなる。分身型ロボットの重量をどの程度軽くできるか分からないが、軽い材料を使用すればそれほど重くはならないと期待する。

    2) 分身型ロボツトの映像は、シニアの眼とは比べ物にならないような精度・明るさが期待出来る。これまでのダイビングよりもはるかに綺麗に見ることが可能で、ズームもワイドもコントローラーで簡単に出来るはずである。写真を撮る時もボタンを押すだけで見たままを撮れる。また、暗い場所でのライトの点滅も自動的およびメイン・コントローラでセットできる。

    3) 分新型ロボットは空気を吸うことは無いので、空気を吐き出す時の雑音はしない。呼吸方法の上手い人と比べても、よりはっきりと水中の音を聞くことが出来るはずである。イルカの鳴き声や大きな群れが動く音も楽しめる。水中の楽しみが1つ増えることになる。

    4) サブ・コントローラに水中会話の機能を付け加えてバディに持ってもらえば、バディとの会話も可能になる。探す場所を指示したり、魚の名前を確認したり、今まで以上に楽しいバディ・ダイブが出来そうである。

     

    C.分身型ロボットの課題: 

    1) 水中での5G機能の限界は良く解らない。空気中と違って、水中での通信はノイズが強い可能性がありそう。水中での5Gのテストを実施し、技術的な改良をするような動機を有する企業・個人がいるかどうか?

2) 価格設定も簡単ではなさそう。需要がどの程度あるのか?私のようなシニア・ダイバーだけでは需要は小さすぎる。リゾート・ホテルやダイブ・ショップが、ノン・ダイバー用のサービスとしてプロモートし、利用客を増大させる見込みが出来れば、一定の需要を期待できる。特に、これまではダイバーを集めることが難しい寒冷地や過酷な場所での体験をプロモートするのも需要喚起に繋がる。また、産業用分身型ロボットの検討をどこかで行っている可能性があると思う。検査目的や探査目的への利用を推進出来れば、基本機能は共通と思うので、ついでにファン・ダイビングの利用にも拡張して貰えば、十分実現可能になるのではと思う。私が85才になるまでの8年間でどこかで実現されることを期待して待つことにする。 


【その他雑感(17):2回目のアイスランド旅行】2018/07/18 21:36

6/23から昨年の10月に続いて2回目のアイスランド旅行に出掛けてきた。今回は、南部をベースに火山列の跡等を目指した。この地域は夏場

にならないと車が入れず、昨年10月は見送りにしていた。

2018の旅行

 今回、拠点としたのはキルキュバイヤルクロイッスルという長い名前の人口160人のこじんまりとした街。

キルキュバイエルクロイッスルの街

航空写真のように、溶岩台地(高さ140m)の麓にある街。泊まったホテルは、台地の湖から流れる滝のわきになる。

1.利用したツアー: ラキ火山列 ジープ・ツアー

 今回の旅行の最大の目的がこのラキ火山列のツアーになる。1783年にプレートの裂け目に沿って長さ26kmにわたって130もの火口が出現し、約1年間線状噴火が継続した。この噴煙が北半球全体を覆い、当時小氷期で寒冷下のヨーロッパが壊滅的な状況になり、フランス革命勃発の原因になったといわれている。

ラキ火山列

 アイスランドでは、溶岩流、噴煙のガス、氷河の溶解による洪水、更にはその後の飢饉で約2割の住民が死亡したとのことである。

 ツアーでは、8人乗りのジープにゲストが、イングランドから50台と思われる夫婦、イスラエルから60台と思われる夫婦、チェコからの女性と私の6名。

ツアー・ジープ

街を出発して2時間ほどでメインのラキ火山に到着。駐車場から200Mの登山。必死の思いで頂上へ。待望の景色で、北、南に火口列を見渡せる。東には氷河も見える。

ラキ火山頂上から

降りてきてから、火口の中を通過。これが130か所で連続噴火と思うと物凄いエネルギーだったと実感できる。

火口の中

昼食後、溶岩原、湖、滝、渓谷と巡る。途中、川を何回か横切るが橋は無く、ジープで突っ込んで行く。

渓谷

普通車では無理であり、車で旅行している人もジープ・ツアーの利用になる。ハイランドと呼ばれるプレートの裂目にそった中央火山帯の地域では、ツアーの観光客以外に人を見かけることはない。草地に放牧されている羊を見掛けるだけである。荒涼としたワイルドな火山の跡地を巡る満足度の高いツアーだった。

 

2.溶岩台地

  アイスランドは、火と氷の国であり、国土面積の11%が氷河、60%以上が溶岩に覆われている。プレートの裂目に沿って何回も火山の噴火があり、溶岩が流れ溶岩台地を構成してきた結果である。

Iceland Plate

特に1783年のラキ火山列の噴火でアイスランド南部に大規模な溶岩台地が出来上がった。Google Mapの地形図で溶岩台地の境目がよく解る。

アイスランド南部地形図

宿泊したホテルの前の台地は高さが約100mの崖になっている。次の宿泊地のヴィークの海岸にある台地は200mの高さになる。アイスランドを1周する国道1号線は台地と平地の境界を走ることが多く、高い台地とその下にある緑の平地に時々出てくる小さな村や台地から落ちる滝の光景は見飽きることがない。溶岩の流れが100m以上の高さを維持したままどうやって台地を形成したのか原因が良く解らない。氷河の影響で、急速に冷えたのだろうか?情報センターで聞いてみたが、私の英語力では深堀できなかった。

 今回は、キルキュバイヤルクロイッスルとヴィークで台地の上まで登った。先ず、ホテルの脇に流れ落ちる滝に沿って滝口まで登る。階段状の道が整備されているので20分程で滝口へ。

滝の上から

街の反対側に降り口があるので、台地の上を散策。湖を超え、草地を上り下り。周りの景色も良く気持ちがよい。人は誰もいない。時々羊ににらまれるだけ。降り口はそれほど整備されておらず、崖にそって慎重に降りて、街の反対側に。ここに柱状節理の上部が出ている場所がある。

柱状節理の上部

柱状節理は溶岩が急速に冷えたときに収縮して六角形の柱状になるもので、日本でも下からや横から見えるものがあるが、上部が見える場所は珍しい。途中バス停を通る時に約50km離れたアイスランド最大のヴァトナ氷河を眺めることができた

バス停から見える最大の氷河

全体で1時間の行程で、中々気持ちの良いウォーキングだった。

 次の宿泊地のヴィークでも海岸まで溶岩台地が張り出している。着いた日は曇/雨で、台地は霧の中でキブ・アップ。翌日朝は霧が晴れていたので、朝一番で挑戦。

ヴィークの溶岩台地.

約100mのトップまで登山道は1本だけ。休み休みで、30分でトップへ。途中で北側にあるミールダルス氷河が良く見えた。

ところが、やっとの思いでトップに着いたら、霧で何も見えない。本来なら、突先まで歩いたり、反対側の海岸まで眺めることが可能だが、危険でもあるので、ギブアップして下山。晴れていれば、眺めも良かったはずなのにやや残念。6月末でハイシーズンなのだが、両方とも溶岩台地の上まで登る人に会うこともなく、独り占めで楽しめた。

 

3.利用したツアー: バイク&ケーブ ジープ・ツアー

 キルキュバイヤルクロイッスルの東側の、溶岩台地に挟まれた溶岩原を川に沿って北上するツアーに参加。今回はやや小さなジープで、イタリアからの親子3人組と一緒に。子供は10歳のイケメンでシャイな男の子。溶岩原は、岩状の溶岩が苔に覆われて全体が薄緑の平原。川沿いや海岸の溶岩原と同じでなかなか印象的である。溶岩原はどこでも小道以外は中に入ることは禁止されている。

溶岩原の中を

しばらく進んだところで、ケーブの入口に到達。富士山の風穴と同様に溶岩が流れた跡が洞窟になっている。

ケーブの中へ.

ヘルメット、手袋、ヘッドライトを着用して中へ。中は狭く、何回も頭をぶつける。ヘルメット、手袋は必須だった。少し広くなった所で休憩。全員のライトを消して、瞑想の時間。音も無く、待つのみ。5分程度なので、瞑想するところまではいかない。戻ったところで、指示された苔の上でランチ。苔は意外にふわふわで固めのクッションのようで、湿った感じはなく、すごく気持ちが良い。

 帰りは、初めてのマウンテン・バイク(MTB)に挑戦、小さなジープが通れるだけの細い砂利道を45分間走る。

帰りはMTBで

平坦な道だが、アップダウンの連続。転ぶと大変なので力がはいり、片手を離す余裕はない。幸い、先頭を走るイケメン・ボーイが15分ほどで疲れて寝転がるので合わせて休息できる。途中3~40mの水たまりに遭遇、何とか一気に突っ切ることができたが、イケメン・ボーイは断念。合わせて両親も途中でストップし、くるぶしまで水没。MTBも結構大変だが、途中の景色も良く楽しいツアーだった。

 

4.6月の環境

 アイスランドは、北極圏ではないので、白夜にはならないが、日の入りは夜中12時前、日の出は3時頃。旅行中星空を見ることは無かった。この時期は雨が少ないはずなのだが、ツアーの2日間だけは、午前中が快晴、午後曇り、夜雨と恵まれたが、他の日はずっと曇り時々雨と天候は良くなかった。気温は例年通りで、日中で10℃前後、関東の3月初めと同様だが、風が冷たく、ハイランドでは体感4~5℃とかなり寒い。タートルネック、ダウンベスト、セーターにコートを重ねて丁度良い。予備にレインコートも持参したが、雨は降らず着る必要はなかった。日本に戻ったら、梅雨明けで30℃。20℃の差は慣れるのが大変だった。

 昨年10月では、花が少なく、鳥を見ることもあまりなかったが、6月下旬だと緑も多く、花もルピナスが綺麗で、草地にも小さな花が沢山咲いていた。崖や草地には海鳥の群生地や巣が多く、実に賑やかである。たまたま草地の群生地の横を通った時は、警戒して2030匹が鳴き声で脅してくる。襲われることはなかったが、結構恐ろしい。大き目の鳥は見えなくなるまで追っかけられていた。

 冬と夏では、違う国のように思える。観光客も6~9月のハイシーズンに集中している。ヨーロッパから近いこともあり、今回会った観光客はすべてヨーロッパからだった。

 人口34万人の国に2017年の観光客は220万人、2010年の5倍とのことで、ホテルは満員。半年前に予約をしたが、高い部屋か設備の悪いホテルしか残っていなかった。ホテル、レストランやショップのスタッフはほとんどヨーロッパからの助っ人で、泊まった3件のホテルのうち2件のフロント・マンがポーランド人でチックイン時にパスポートを出したら、W杯の日本対ポーランド戦が話題になった。

 

 2回の旅行で、ガイドブックにある「行くべきポイント」は一通り体験し、大いに楽しむことができた。また行きたいと思うが、なにせ高いし、もっと楽しむためには車の運転ができないとつらい。でも機会があればまた計画したい。





【その他雑感(16):アイスランド旅行】2017/11/15 19:02

10/23-10/31にずっと行きたかったアイスランドへ旅行した。アイスランドは、氷と炎の国と言われ、火山と氷河と地球の裂け目が見どころ。女房殿を誘ったがワイルドらしいので付き合えないとのことで一人で出掛けた。結果として、天候に恵まれすごく楽しい旅行だった。6泊8日で、初めてのアイスランドで、車の運転も出来ないので、Day Tour を選別して1,2,4,6日目に下図の場所へ。3,5日はレイキャビク市内を散歩した。

マップ

日程

(一番行きたかった中部の火山跡(青〇)は夏しか行けないため、次回に持ち越し。)

  1. 1.ゴールデン・サークル: グトルフォス(滝)、ゲイシール(間欠泉)、シンクヴェトリル(地球の割れ目)等の定番ツアー

      1. 1)大半の観光客が選択する定番のバス・ツァー。アイスランドでは多くの滝を見ることができるが、ゲトルフォスが一番の迫力だった。

ガトルフォス
ゲイシール
      1. 2) ゲイシールは5~10分で吹き上げるので写真は撮りやすい。

      2. 3) シングヴェトリル国立公園は北アメリカ・プレートとヨーロッパ・プレートによる地球の割れ目(ギャウ)の間をウォーキング。

ギャウ
  1. 2. 南部のスコガフォス(滝)とヴァトナ氷河国立公園、氷河湖でボート・クルーズ(片道約350kmの長距離)

  1. 1) スコガフォス(滝):高さのある滝だが、水量が凄い。

スコガフォス
  1. の後、山側と海側の間をずっと走ったが、座席の選択が大間違い。何も考えずに右側に座ったが、景色の良いのはほぼ全て山側の左側。帰りは夕方で良い写真は撮れず。常に、乗る前にどちら側が良いか確認する必要がある。

席の間違い
  1. 2) ヴァトナヨークスル氷河:東西140km、南北100kmの山全体が氷河であり、ヨーロッパ最大級。各所で山を下っており、バスから眺めることが出来る。そのような1ヶ所で、休憩、ランチ。

  1. 3) ヨークルスアゥルロゥン氷河湖ボート:ボート・ツァーは9月末までと知らされていたが、天候も良く、風も無かったため運行しているとの情報があったとのことで、急遽窓口に並んで切符を購入。

ツァー用ボート
氷河湖
  1. 約1時間の氷河湖クルーズ。

1.5km程先で氷河から崩れた氷塊があちこちに漂っている。
小さな氷山
大きいのは氷山まがいで今まで見たことのない景色で、あっという間に時間が過ぎる。その後で氷河湖から流れる河が海に流れ込む場所に移動。海岸に氷の塊がアチコチに散見している。これも不思議な光景。
海岸の氷塊
  1. 4) オーロラ・ポイント:帰路の途中でオーロラが見えるとの情報で予定外にオーロラ・ポイントの1つに立ち寄った。雲がほとんど無く、オーロラの強さもかなり高く、良く観察できた。GoPro用の三脚しか無かったが、結構綺麗に撮れた。予想外の行動が多く、朝7時に出発し、ホテル到着は23時過ぎ。

  1. 3. レイキャビク市内を散歩:宿泊したホテルで滞在中の無料バス・カードを提供してくれるが、Central Reykjavicはブラブラ歩いて散策するのに丁度良い。先ず、丘の上にあるハットルグリムス教会を見学し、そこから街を巡ってWalking。高い教会の塔が目印になり、どこにいるか解りやすい。

ハットルグリムス教会
チョルトニン湖
  1. チョルトニン湖や港にも簡単に歩ける。疲れたら、本屋や土産物屋に併設している”Te & Kaffi”なるCoffee Shopで気楽に休憩できる。 何件かあるので、見掛けたら場所を覚えておくと良い。コーヒー一杯が\500

  2. 4. アクレイリ(国内線で)からツアー:ミーヴァトン湖周辺の溶岩台地、地熱地帯、滝、露天温泉

    1. 1) 北部のアクレイリまで朝一の国内線を利用し、接続するバス・ツアーでミーヴァトン湖近辺の火山跡地域へ。国内線が50分遅れ、バスとの接続を心配していたら、アクレイリ空港でミニ・バスが待機。ゲストは一人だけ。一日ガイドと二人だけかと思ったが、英語は堪能ではないと宣言したらゆっくり話してくれ、解り易くていいなと思っていたが、しばらくしてガイドに電話で二人追加の連絡。戻って二人を吸収。シカゴからのカップルということで、ガイドも快調に説明を開始。地形や歴史の説明はほとんど理解できないが景色を眺めることだけでも十分に楽しめた。いつも帰ったらもっと英語を勉強しようと思うが年を取ってからはなかなか上達しない。

    2. 2) コーザフォスを経由してミーヴァトン湖へ。湖の周囲には、火山の跡をあちこちで見ることが出来た

ゴーザフォス

小さな火口跡

クヴェリル 

毛深い羊

  1. 雨模様でウォーキングは少な目ではあったが、小さな火口が沢山ある区域、溶岩が積もって岩場のようになっている区域(軽井沢の鬼押し出しのスケールのデカいもの)、そこら中で蒸気が噴出している地域、小さな湖が温泉になっているネイチャー・バスと見所が沢山。

  1. 3) ネイチャー・バスは、レイキャビクの近くに有名なブルー・ラグーンがあるが、その小型版。やや温めの場所が多く、満足できる暑さの場所は少なく、そこでも人の動きで温くなるので、日本の温泉のようにはいかない。結局、スティーム・バスの部屋でずっと暖まっていた。

  2. 4) 帰りは、アクレイリ市に戻り、夕食を取り、夜の便でレイキャビクへ。ホテルに10時過ぎに帰着。

  1. 5. レイキャビク市内を散歩: 3ヶ目とやや違う場所を土産を探しながらウォーキング。ウールの良いものが沢山あるが、年寄には高すぎて手がでない。

  2. 6. スナイフェルスネース半島-氷河跡(U字谷、フィヨルド)、溶岩跡、黒の海岸

    1. 西南部の半島へ。

    2. 1) 半島全体が氷河と火山で出来上がっているようで、山側は氷河のU字谷、海岸は溶岩が固まってできている。面白かったのは、バスで中規模の火口に入ったこと。入口を除いて360度火口壁。バス・ツアーも4日目になると見慣れてくるので、感激は少し薄れてくる。初日、2日目が青空に比べて、この日はどんよりと曇り、風も強かったせいもあると思うが。

    3. 2) 半島の北側にでたら、もの凄い風で大型バスでさえ揺れる。無理との判断で、山側をショートカットして帰路へ。

       

      【トピックス1】費用-7泊8日 合計約42万円 

  • 飛行機代:SAS コペンハーゲン経由 :\116,400  (調べた中では一番安かった。席の事前予約\4,200/片道は初めて。乗ってみたら満席に近かったので、納得。)

  • ホテル代:Iceland Air Hotel Natura : 7泊(King’s Bed/Shower,朝食付き)、秋のキャンペーン価格で\147,900。観光客の急増(昨年比 30%増らしい)で予約はなかなか取りにくかった。

宿泊ホテル
  • Day Tour 料金: \110,000 4日間+オーロラ・ツアー+空港送迎バス): 

  • 食事/コーヒー代: 昼/夕食x6日: 約\40,000。 食事は凄く高い。日本の倍はしていた。ケチって、郷豪華な食事はとらず。ガイドブックによるとDay Tour で行く場所では昼食は取りにくいとあったが、必ず昼食コーナーのある休憩所によるので心配はないが、パン付スープとコーヒーで\2000はする。

    結果として、各ツアー会社の8日間ツアーと同程度。一人で行きたいところに行けたことを考えればまあまあと思う。レンタカーを自分で運転出来れば、もっと安く出来たとは思うが運転免許は持っていない。

    【トピックス2】オーロラ

    10月頃から観察できるとのことで、初日にオーロラ・ツァーに参加したが、雲が多く隙間に少し見えた程度で終了。でもオーロラの中に北斗七星。

  • 良く見えなかったため、ツアー会社からRe-Book可との対応があり、4日目に再参加。良く晴れていたが、オーロラが弱く空の低い部分への出現で上を向いて見ることは無かった。

ミラーレスでのオーロラ
  • 2日目のヴァトナ氷河ツアーの帰りに気象条件が良いことから、わざわざオーロラ観測ポイントに立ち寄ってくれたが、この時は綺麗に観測できた。期待はしていなかったため、ちゃんとした三脚を持参せずで、GoPro用の小さな三脚で挑戦。

GoProでオーロラ
  • GoProは入手したばかりであったのに、結構良い写真が撮れる。ナイトラプス機能でカメラの向きだけセットし、そのまま放置。自動的に撮影(シャッター・スピード20Sec60Sec間隔)してくれる。広角で撮影できるので、狙って撮る必要が無く、シロート向き。

     今回も肉眼では白く見えるだけで、カメラのシャッター・スピードをかなり遅くして初めてグリーンになる。オーロラが凄く強いと肉眼でもグリーン/レッドに見えるらしいが、チャンスは少ないとのこと。

     

    【アイスランドのついでの話 1】 悪いことは続く

     10月上~中旬に連続して予想してなかったトラブルに遭遇。

  1. 1) PCのディスク(SSD)が突然読めなくなった。一番大事なファイルを保管していたが、Back Upを取っていなかった。古いBack Upも整理時に消去していた。Directoryが破損したと想定して、リカバリーサービス企業に電話。程度によって、5万円から50万円掛かる。検査して見積もりするとのことで、持参して依頼。最初の見積もりは32万円、次は24万円、高いので送り返してと頼んだら上司と相談して8万円に。バックアップ無しの弱みで復元を依頼。結果は100%復元だが、SSDそのものは修復できず。復元+新HDDで9万円の散財。バックアップはこまめに取ろう。

  2. 2) 数日後、蓄積している映画ビデオの記録データを間違って消去。このファイルもバックアップ無し。1000本以上の記録で、印刷しているリストから再入力が必要。まだ入力完了していないが、毎回バックアップにコピー。

  3. 3) 自分の最後の歯の親不知が欠けたため、歯医者へ。最後の自分の歯だけど、治療しても効果は無いので抜きましょうと言われ、あっさり抜歯。とうとう自分の歯がゼロに。少々寂しいが、実害もないのでやむを得ない。

  4. 4) 中旬にプリンターが音を上げた。「故障です。修理センターに回復を依頼して下さい。」のメッセージで、黙ってしまった。4年間こき使ったので寿命と判断して、新規購入を決定。

  5. 5) 最後は、アイスランドへの出発日(10/23)に台風直撃の予報。10/21に成田近辺のホテルを探したが、全て満員。範囲を拡げて検索したら、匝瑳(そうさ)市にある空港送迎可の民宿を見つけ早速予約。何と読むかクイズに出てくる市で、千葉にあることは知っていたが場所は知らない。10/22に八日市場から送迎を依頼して宿の「ふくろう邸」へ。夫婦二人で運営するこじんまりした民宿だが、部屋もきれいで、素晴らしい対応をして貰った。10/23朝、台風の最中空港まで送って貰った。いつもは20分のところを30分で到着。飛行機も時間通りで、問題無くアイスランドに出発出来た。お蔭で悪いことの連続はストップ。アイスランドで良いことを楽しむことが出来た。「ふくろう邸」に感謝。

     

    【アイスランドのついでの話 2】 TVシリーズ Game of Thrones 原作 「氷と炎の歌」

     TVシリーズ「Game of Thrones」は、2013年のシリーズ1から始まり、2017年のシリーズ7まで続いている大作で、アイスランドでも撮影していることで評判になっている。シリーズ1から蓄積していたが、アイスランド行きを機に見ることにした。各シリーズが10話(1時間)、シリーズ7が7話で構成されているので、全部見るのに77時間。原作(1~5巻まで発売されており、全部で11冊)も図書館で借りて11冊を読破。イギリスの七大国等をモチーフにしたと言われている王座を争う歴史小説であり、凄く面白い(暴力とエロチシズムがふんだんのためR12)。あまりにも大作で、原作は5巻までしか発表されていないのに、TVシリーズはシリーズ7まで放送され、来年予定のシリーズ8で完了と発表されている。TVシリーズのストーリーも原作者と打ち合わせて作成されているが、TVシリーズが原作を飛び越えている。原作者は6巻、7巻の発表を約束しているが、まだ発表されていない。両方とも待ち遠しい。

     





「その他雑感」(15)):<営業主導の企業改革> 企業戦略と連動した営業職の役割の変革】を纏めました2017/07/17 09:54

【その他雑感(15):<営業主導の企業改革> 企業戦略と連動した営業職の役割の変革】を纏めました

 

<営業主導の企業改革> 企業戦略と連動した営業職の役割の変革という資料を第二弾としてまとめてみましたので、興味のある方は参照ください。

第一弾として4月にまとめた「働き方改革に向けて-伝統的多段階組織終焉の勧め」も合わせて参照ください。両資料で完了です。

 

下記のDropboxFolder をアクセスしてください。Word 文書で 36 Page 2.03Mbになります。

4月にまとめた「働き方改革に向けて-伝統的多段階組織終焉の勧め」文書も当Folderに保管しています。

 

https://www.dropbox.com/sh/dg8k3qfpcj1u4pp/AACmQkmfxTpbySFBHPs4N09Na?dl=0

 

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yf2n-fry@asahi-net.or.jp

 

序文と目次を紹介します。

 

      序

1990年前半の、いわゆるバブルの崩壊に伴い、高度成長時代が終わり、低成長期に入り、日本の各企業は現在でもまだ企業改革の必要性に追われているのではないかと思われる。この企業改革の非常に重要な鍵の一つが営業職の役割の改革であるが、必ずしも順調に進んでいるとは言い難いのではと考えている。当資料ではその背景やあるべき姿について纏めてみたい。

営業職の役割とは何だろうか? インターネットでの検索してみると「営業職とは得意先を回って顔つなぎをし、商品の紹介、売り込みをすること。また、新しい得意先を開拓すること。」とある。この原則の中で具体的な営業職の役割は1990年以前と現在を比べると幾つもの変革が必要であり、営業部門としての種々の仕組みの改革が要求される。

バブル以前の日本の社会は上手く棲み分けが出来ていて、多くの業種で競争が制御されていたと言える。

1955年頃からの高度成長時代に脈々と構築された営業モデルは種々の企業が隈なく高度成長の恩恵を得られるための合理的なものであり、競争に対する意識はそれほど高くは無かったと言える。

しかし、1990年以降のバブル崩壊に伴って、多くの業種で厳しい競争状況にあり、お客様や市場の変化や急速な技術革新にも対応する必要があり、営業部門として解決しなければならない課題も多い。当資料では、それらの課題と背景を確認し、それらの課題を解決するために求められている営業職の役割と営業部門のあるべき姿を、主としてBtoBの企業を対象に纏めてみたい。BtoCでも最近の富裕層を対象とする環境であれば同様に適用可能と考える。

また、当資料はIT企業である日本IBMに在籍し、1995年からの世界レベルでの大規模な社内改革に従事した経験とその後の営業系研修を担当してきた経験に基づいてまとめたものであるため、偏ったケースや当てはまらない場合もあると思うので、参考になりそうな項目を選択して確認頂きたい。

             作成者 古屋 尚文  作成日 2017/07/17

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                          作成者プロファイル

              1965         : Systems Engineerとして入社(名古屋)

              1965~1994 : SE, SE Manager, Sales Manager等として従事

              1995~2002 : 業務改革推進にて社内改革に従事

              2003~現在  : プリモD等のパートナーとして営業系研修を担当

 

目次

第1章 営業職の役割の変化

1.1990年代からの変動

バブル崩壊による競争の激化

市場・顧客の変化

技術革新・規制緩和による異業種の参入

アフィリエーション(企業協力関係)の拡大

競争激化による利益確保の必要性

2.現在の営業部門に要求される役割と課題 

1)経営戦略の2方向展開の中心 

2)競争激化による利益確保と販売一般管理費削減の要求

販売効率の最適化

売上拡大

3)販売戦略の変化 (需要対応型→需要創生型)

全社を挙げての営業部門支援体制と必要な要員の最適配置

第2章 現在の営業部門に必要となる仕組み

  1. 販売戦略立案の在り方

    1)販売戦略立案の主眼点

    戦略1:信頼関係強化による既存のお客様の維持

    戦略2:新しいビジネス・モデル(速い・簡単・新技術)による新規分野への挑戦

    戦略2:需要創生活動

    2)販売戦略とチャネル計画

    販売活動支援体制

    3)ソリューション・セリングの狙い

    4)ソリューション・セリングの役割分担と活動

    2.営業職の役割分担と営業管理者の役割

    1)新しい営業職の役割

    お客様担当営業職

    ソリューション担当営業職

    ビジネス・パートナー担当営業職

    セールス・センター担当営業職

    ) 営業管理職の役割

  1. カストマー・プラニング

    1. お客様の現在の状況の把握

      2)本年度の活動計画

  2. ソリューション・セリング

    1. 需要喚起のプロセス・ステップ

      2)ソリューション・セリング・プロセスのあるべき姿

      課題創出

      キャンペーン計画

      事前準備

      聴くスキル

      キー・パーソンの選択

      提案活動を開始する基準(選択基準)

      意思決定者の選択

      価値の確認

      組織力による契約率向上

      5.ダイナミック・チームによる営業活動

      1)ダイナミック・チーム編成の仕組み

      2)提案ソリューションとダイナミック・チーム

  1. 統合販売管理(オポチュニティ管理/パンプライン管理/販売予測)

    1)統合販売管理の必要性

    販売戦略の一本化

    営業個人の努力から営業部門全体の努力

    販売活動の進捗管理

    2)統合販売管理の設計

    販売活動状況の把握

    課題の分析

    販売管理プロフェッショナル職の育成

    統合販売管理でのITツールの活用

    3)オポチュニティ管理

    オポチュニティ管理の狙い

    4)パイプライン管理

    パンプライン管理の分析方法

    5)販売予測

    6)統合販売管理の運用

    売上高の最大化

    逸失オポチュニティの分析

    営業第一線にとっての統合販売管理

    データ精度の管理

    終わりに:経営戦略の2方向展開を支援する情報管理

    付: プロセス設計の考慮点

  1. 解決策の検討とあるべきプロセスの設計

    2)プロセス設計の承認(走りながら考える)

    3)プロセス推進計画の作成と新規プロセスの運用